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【プレゼントあり】「等身大のキャラクター」5歳~

2015年11月13日 11:51 | 約9分で読めます
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子うさぎましろのお話

子うさぎましろのお話 (おはなし名作絵本 3)


「子うさぎましろのお話」 佐々木たづ・さく 三好碩也・え 松谷みよ子 ポプラ社 全国学校図書館協議会選定・よい絵本

クリスマスの日、サンタさんからまっ先にプレゼントをもらった子うさぎの「ましろ」は、もう1つプレゼントが欲しくなってしまいます。
墨で身体を汚し別のうさぎの子になりすまし、サンタさんにプレゼントをまだもらっていないとせがみます。それが「ましろ」であるとすぐにわかったサンタさんですが、そうとは言わずに小さなタネと自分のサンドイッチを差し出します。
ましろは家に帰る途中、墨をなんとか落とそうとしますが、墨は落ちません。
「うそをついたからだ」とぽろぽろ涙を流すましろ。
反省した「ましろ」はタネを神様にお返ししようと雪を掘って土の中に埋めることにしました。するとましろの身体は元のとおりまっしろに。そして「ましろ」が植えたタネが成長して・・・。最後は心躍るフィナーレが待っていますよ。絵本プレゼントコーナー絵本をもっとめくってみる日本でもすっかり定着しつつあるハロウィーンが終わったばかりですが、お次はいよいよクリスマスですね。ただ楽しいイベント毎に終わらず、商業ベースに踊らされず、その本来の意味も考えつつ楽しみたいものですねとついつい思ってしまう私です。

さて、この絵本は1970年の初版依頼、現在に至るまで長きに渡り読み継がれてきました。絵本というには少々文が長いので、お話といったところでしょうか。三好さんの愛らしくも完結でシンプルな挿絵はこのお話に想像力の余地を残しますが、絵本を読むというよりも、子ども達を傍らに口頭伝承されてきたような感じを受けるほど聞いているだけでも十二分に想像力を膨らませて楽しむことができます。

そして何よりこの絵本のおもしろさはこの「ましろ」のキャラクター性に寄るところが大きいように思います。プレゼントのケーキをペロリと食べてしまうところ、もっとプレゼントが欲しいと思うところは何とも子供らしく親しみが持てます。
嘘はいけないと思いつつも浅はかなうそをついてしまうところも子どもの頃に誰にでも経験があるのではないでしょうか。嘘をついたがために身体につけた墨が落ちなくなってしまいぽろぽろと涙を落とすシーンはましろの後悔の念が切々と伝わってきてかわいそうになるほどです。

とにかく良くも悪くもこの「ましろ」はいつでも一生懸命に自分で考え、自分なりの解決策を見つけ行動します。読者側は「あーあー」と思いつつもこの一生懸命さに愛おしさを感じてしまう。いたずらもいっぱいするけれど、根っからの悪い子ではないな。と感じる愛すべきキャラクターなのです。
そのキャラクター性は三好さんのイラストが一役買っています。これがシリアスな絵や厳かな雰囲気の絵であったならこんなにも長きに渡り多くの人に愛されなかったのではないかと思うのです。三好さんの軽やかなイラストだからこそユーモアのある愛嬌のあるましろに感情移入し、教訓めいた話も説教くさくならず、宗教的な要素も軽やかに飛び越えてお話の世界を楽しませてくれるのです。

最近、ある大学で絵本を作る講座を非常勤講師として持たせていただいています。なんとなく書きたいお話が決まったら紙の真ん中に視覚的に今考えるキャラクターの絵を描いて、その周りにそのキャラクターの好きな事、嫌いな事、得意な事、苦手な事、家族構成や友達などなど、お話に直接関係あることもないこともとにかく書き出してもらう作業をしてもらっています。お話を作る上でまずは自分の産み出したキャラクターと向き合う時間を持つことが大切。愛すべきキャラクターを産み出すにはまずは親である作者がそのキャラクターを愛してあげなければなりません。しばらくその紙を壁に貼って毎日眺めたり、声をかけてみる。その作業を生徒たちは目を輝かせて取り組んでいて、見ている私も楽しい時間です。
私自身、彼らの手から産み出される新しいキャラクターをワクワク心待ちにしています。もちろんまだまだ悩みながらおぼろげな輪郭のキャラクターを描いている生徒もいますが、それも産みの苦しみ。きっと毎日向き合う事で自分にとっての愛すべきキャラクターが形をなしてくると信じています。
するとそのうちキャラクターの方が勝手に動きだすことでしょう。ヒントをくれるというのでしょうか。お話を展開して行く際にこの子だったら何て言うだろう、この子だったらどういう行動に出るだろうと。

ちょっと脱線しましたが、もう1つこの絵本で特質すべきはサンタクロースのおじいさんの懐の深さでしょう。サンタクロースといっても私達が知っている赤い服ではなくその帽子や白い衣装。これはクリスマス絵本ではとても珍しですね。
どうもサンタクロースの起源とされている聖ニコラウスを思わせます。聖ニコラウスは無償で貧しい人たちを助けた聖人として知られており、それがサンタクロースの始まりと言われています。
ましろに嘘に付き合ってあげるところは、嘘を許してあげているのではなく、そんな本来のサンタクロースの姿そのものを投影させているのかもしれません。いえ、もしかしたらその後の展開もこのサンタさんにはわかっていたのかもしれませんね。
全てお見通しだったのでしょうか。うそをついた「ましろ」をいきなり正すのではなく、自分で気づかせて、最後はサンタさんに嘘をついたことを告白させる。自分で気づかせることはその子のプライドも守っている事だと思います。
告白したときも責めるのではなく、優しく頭をなでてあげるだけです。これはなかなかできることではありませんが、包み込むようなサンタさんの愛情あってこそ「ましろ」の心を動かしたのかもしれませんね。

もちろん、悪い事をきちんとはっきり教えてあげることも必要ですが、自分から気づくという方向に導くのも大人の役割な気がします。

最後は教訓めいたことはさておき、絵本らしく、心踊るフィナーレが待っています。ましろが植えたタネが成長をして・・・こんな木があったらどんなに楽しいでしょう!

日本ではプレゼントをもらえるイベント毎になっていますが、クリスマスには楽しいお話と共に少し考えさせられるテーマも良いのではないでしょうか。この絵本を傍らに良いクリスマスをお過ごしください。

バックナンバーを見る★クリスマスの意味を教えてくれる絵本★

クリスマスおめでとう

サンタクロースっているんでしょうか?

クリスマスってなあに (講談社の翻訳絵本)

★サンタクロースがでてくる絵本★

絵本の中にはいろんなサンタがいるんです!

サンタおじさんの いねむり (日本の絵本)

さむがりやのサンタ (世界傑作絵本シリーズ―イギリスの絵本)

サンタクロースと小人たち (マウリ・クンナスの絵本)

NPO法人セカンドブックアーチ

NPO法人セカンドブックアーチについて

読まなくなった不要な本、またはもう読まないけれど捨てられない大切な本を地域のために役立てたいとの思いから、2007年より茅ヶ崎にて活動を開始。本をこよなく愛するスタッフで構成されており、本というものは読み終わった後に捨ててしまう、売ってしまうといった、たんなる消費物ではないと信じて活動しています。

寄付可能な本は、児童書・単行本・古書・各種参考書など様々。詳しくはホームページをご覧ください。

ホームページ:http://www.npo-sba.com

Filed in: あの子の絵本箱

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文:

1978年生まれ。茅ヶ崎に育つ。 大学時代に死生学に興味を持つ。セツ・モードセミナー卒業。 パレットクラブ絵本コース卒業。絵本ワークショップ「あとさき塾」「チャブックス」に参加。 2005年より、個展等にて作品を発表。第7回逗子市手作り絵本コンクール「優秀賞」受賞。 『てがみぼうやのゆくところ』にて、第35回講談社絵本新人賞受賞。本作がデビュー作となる。 加藤晶子ホームページ「アトリエメクル」 http://atelier-mekuru.com 「てがみぼうやのゆくところ」加藤晶子作 講談社 定価1300円(税別) 書店、amazon等にて販売中

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